食事摂取基準(2020年版)で数ある微量ミネラルを理解する

健康について学ぶ 厚生労働省から学ぶ栄養
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世の中の怪しげな情報に惑わされないために大事なのは、まずオフィシャルな情報に当たることです

ということで、厚生労働省の栄養摂取基準である「日本人の食事摂取基準(2020年版)」を読み解いています

今回は微量ミネラルについてです

 

↓総論はこちら

食事摂取基準(2020年版)でダマサれない栄養知識を身につける
栄養周りの情報はとにかく玉石混交で、商品マーケティングのために発信されていることも珍しくありません。必要以上に不安をあおられないようにするために、まずは厚生労働省の栄養摂取基準で基本を学びましょう!

 

私の主観で重要度を★の数で表現しています(そもそも過剰なものを除く)

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鉄(重要度★★)

鉄は、ヘモグロビンや各種酵素を構成し、その欠乏は貧血や運動機能、認知機能等の低下を招く。また、月経血による損失と妊娠・授乳中の需要増大が必要量に及ぼす影響は大きい。

女性は特に意識して摂られているかもな鉄です

肉や魚に多く含まれるヘム鉄と、野菜や穀類に含まれる非ヘム鉄に分かれます

ヘム鉄の吸収率のほうが3倍ほど高いとのことですが、日本人の主な供給源は非ヘム鉄だそうです

月経がある女性はやや不足傾向があるが…

成人の推奨量は7mg/日前後ですが、女性の場合は月経で大量に血液を失うので多少多めに摂る必要があります

その場合は、おおよそ3.5mg/日を追加すると補えるとのこと(もちろん個人差がある)

ただちょっと気になる記載がありました

鉄の平均摂取量が2015 年版の推定平均必要量を下回っていても、貧血有病率は低率であるとみなせることから、中学生を含む6歳以上の年齢層の推奨量設定に係る変動係数は10% と見積もることで十分と判断した

茨城県のある地域を調べた調査では、鉄の摂取量が推定平均必要量を下回っていても、

対象女子中学生の6%程度しか貧血を発症しなかったとのこと

月経により鉄を補給する必要はあるが、鉄を摂ったからと言って貧血が治るわけではない、ということでしょうか

 

平均的な日本人男性ならば不足はしていないようです(国民健康・栄養調査)

鉄分のサプリメント及び過剰摂取はリスクが高い

 高齢女性を対象にして、サプリンメント類の使用と総死亡率との関連を検討した疫学研究において、鉄サプリメントの使用が総死亡率を上昇させることが認められている27)。さらに成人では、組織への鉄の蓄積が多くの慢性疾患の発症を促進することが報告されていることから28)、鉄の長期過剰摂取による鉄沈着症を予防することは重要である。(中略)

一方、鉄の過剰摂取によって体内に蓄積した鉄は、酸化促進剤として作用し、組織や器官に炎症をもたらし、肝臓がんや心血管系疾患のリスクを高める28)。

サプリメントを使って鉄分を補給するのは避けたほうが良いでしょう

慢性疾患や酸化、炎症など幅広くリスクを高める作用があるようです

この他、非ヘム鉄を投与したグループは便秘や胃腸障害を訴える確率も高いとのこと

 

サプリメントを用いるのであれば、医者の診断に基づいて行いたいところです

目標量(上限値)を設定するための定量的な情報は不十分であるが、貧血の治療や予防が必要でない限り、鉄の過剰摂取については十分に注意する必要がある

とのことでした。特に男の場合、あえて意識して摂るメリットは感じませんね

亜鉛(重要度★★)

 亜鉛は、体内に約2,000 mg 存在し、主に骨格筋、骨、皮膚、肝臓、脳、腎臓などに分布する。亜鉛の生理機能は、たんぱく質との結合によって発揮され、触媒作用と構造の維持作用に大別される45─47)。亜鉛欠乏の症状は、皮膚炎や味覚障害、慢性下痢、免疫機能障害、成長遅延、性腺発育障害などである

続いて男性に大人気な亜鉛です(精○の材料になるとかならないとか)

皮膚、味覚、消化器、免疫など幅広く影響します

男だからといって特段大量に必要なわけではない

日本人を対象にした研究は少ないようです

推奨量は成人男性で11mg/日、女性で8mg/日です

一応、精○で消費するとはありますが、男だからといって大量に必要とは言われてないですね

 

国民健康・栄養調査においても、男女ともに特に不足しやすい訳ではありません

ちなみに生牡蠣100gで14g、牛肉100gで6g程度摂取できます

サプリメントのや亜鉛強化食品の大量摂取に注意

平成28 年国民健康・栄養調査における日本人成人(18 歳以上)の亜鉛摂取量(平均値±標準偏差)は8.8±2.8 mg/日(男性)、7.3±2.2 mg/日(女性)であり、通常の食品において過剰摂取が生じることはなく、サプリメントや亜鉛強化食品の不適切な利用に伴って過剰摂取が生じる可能性がある。

(中略)大量の亜鉛の継続的摂取は、銅の吸収阻害による銅欠乏がもたらすスーパーオキシドジスムターゼSOD)活性の低下67)、鉄の吸収阻害が原因の貧血68)、さらに胃の不快感69)などを起こす

耐用上限は成人男性で40mg/日、女性で35mg/日です

それほど重いリスクはないですが、亜鉛単体のサプリメントだと15mg/粒くらいあったりするので要注意

銅(重要度★★)

銅は、約10 種類の酵素の活性中心に存在し、エネルギー生成や鉄代謝、細胞外マトリクスの成熟、神経伝達物質の産生、活性酸素除去などに関与している

鉄や亜鉛と比べるとやや影の薄い銅です

鉄代謝や神経伝達物質、活性酸素除去(抗酸化)と、幅広く影響する印象です

平均的な日本人はおおよそ十分に摂取できている

一方、摂取不足に起因する後天的な銅欠乏症は、外科手術後に銅非添加の高カロリー輸液や経腸栄養剤を使用した場合に多く発生している79)。食事性欠乏における症状は、鉄投与に反応しない貧血、白血球減少、好中球減少、脊髄神経系の異常などである

銅が鉄代謝に関係することから、不足すると貧血に近い症状がでるとのこと

推奨量は成人男性で0.9mg/日、女性で0.7mg/日です

日本人平均では1.1~1.2mg/日ほど摂取できているようなので不足しやすいわけでは無さそう

イカ、エビ、ごま、大豆に主に含まれます

過剰摂取リスクは低めだが、サプリメントの死亡率上昇リスクあり

通常の食生活において過剰摂取が生じることはないが、サプリメントの不適切な利用に伴って過剰摂取が生じる可能性がある。(中略)先に述べたように、血漿・血清銅濃度は、銅の摂取量0.57〜6.9 mg/日の範囲で一定である75)。血漿・血清銅濃度の上昇を直ちに健康障害の発現とみなすことはできないが、6.9 mg/日は参考にすべき数値である。一方、10 mg/日の銅サプリメントを12 週間継続摂取しても異常を認めなかったとする報告がある86)。

過剰摂取リスクは低めでしょうか

推奨量の数倍摂ったとしても問題はなさそうですが…

高齢女性を対象に、様々なサプリンメントの使用と全死亡率との関連を検討した疫学研究において、銅サプリメントの使用が全死亡率を上昇させることが認められている27)。このことは、サプリメントの使用が、推奨量を大きく超える量の銅の摂取につながり、健康に悪影響を及ぼすことを意味している

高齢女性(おそらく月経が止まった人々)を対象に、銅サプリメントで死亡率が上昇することが認められています

男にも影響するかは不明ですが、あえて摂取する必要もないかと思います

マンガン(重要度★)

実験動物におけるマンガン欠乏の症状として、骨の異常、成長障害、妊娠障害などが報告されているが、動物種による差異が大きい。ヒトのマンガン欠乏症として最も可能性が高いのは、長期間完全静脈栄養療法下にあった小児に発生した成長抑制とびまん性の骨の脱石灰化である。

マンガンの作用や欠乏時の影響については調査が進んでいないようです

マンガンの不足リスクはかなり低い

マンガンの平衡維持量を求めるための出納試験が国内外で試みられている91,92)。しかし、マンガンは吸収率が低く、大半が糞便中に排泄されることから、出納試験から平衡維持量を求めるのは困難である。そこで、マンガンの平衡維持量を大幅に上回ると考えられる日本人のマンガン摂取量に基づき目安量を算定することとした。

必要量を算出することが難しく、糞便中に大半が排泄されることから、必要量はかなり低いと推定されています

よって、日本人の平均摂取量を元に目安を設定しているとのことです

日本人は欧米人より倍程度マンガンを摂取しているので、半分くらいでも問題ないとのこと

 

ショウガや大豆、小麦、ナッツ類など幅広く含まれますので不足の心配は少なそう

過剰摂取のリスクはあるが危険性は低そう

完全静脈栄養によって2.2 mg/日のマンガンを23 か月間投与された症例では、血中マンガン濃度の有意な上昇とマンガンの脳蓄積が生じ、パーキンソン病様の症状が現れている94)。この症例のマンガン曝露は食事由来ではないが、マンガンの過剰摂取による健康障害は無視できないことから、耐容上限量を設定する必要があると判断した。

(中略)マンガンは、穀物や豆類などの植物性食品に豊富に含まれるため90)、成人の目安量設定に用いた日本人成人のマンガン摂取量(約4 mg/日)は、欧米人の摂取量99)を明らかに上回っている。すなわち、マンガンの場合、サプリメントの不適切な利用に加えて、厳密な菜食など特異な食事形態に伴って過剰摂取が生じる可能性がある

穀類や豆、木の実を常食する厳格な菜食主義者だと10mg/日を超えるとのことですが、それでも明確に健康障害が出ているわけではないので、それほどリスクは高くなさそうです

ヨウ素(重要度★、どちらかというと過剰気味)

人体中ヨウ素の70〜80% は甲状腺に存在し、甲状腺ホルモンを構成する。ヨウ素を含む甲状腺ホルモンは、生殖、成長、発達等の生理的プロセスを制御し、エネルギー代謝を亢進させる。また、甲状腺ホルモンは、胎児の脳、末梢組織、骨格などの発達と成長を促す

「ヨウ素をデンプンにつけると色が変わるよ!」的な小学校の実験を思い出しましたが、重要そうですね

ホルモン機能は体のあらゆるところに作用するので気をつけたいところ

海藻類に大量に含まれるので不足リスクは低い

後述のとおり、日本人のヨウ素の摂取量と摂取源は特異的なので、欧米の研究結果を参考にするのは問題かもしれない。しかし、日本人において、推定平均必要量の算定に有用な報告がないため、欧米の研究結果に基づき成人と小児の推定平均必要量と推奨量を算定した。

何が特異的かというと、ヨウ素は海藻類に多く含まれ、中でも昆布は桁違いに多いという点です

なので海藻類や昆布(及び昆布だし)を定期的に食べるような人であれば不足の心配は無さそうです

その一方で、

 なお、海藻類を食べない日本人集団のヨウ素摂取量が平均で73 μg/日にすぎないと報告されていることから146)、意図的に海藻類の摂取忌避を継続することは、いずれの年齢層においてもヨウ素不足につながる。したがって、ヨウ素摂取を適正に保つには、昆布を始めとする海藻類を食生活の中で適切に利用することが重要である。

同じ日本人でも海藻類を食べないグループは推奨量(130ug/日)を下回っているとのこと

ちなみに推奨量は干し昆布や乾燥ひじき1g未満で到達します

また、大豆(イソフラボン)はヨウ素の吸収を妨げるので、合わさると要注意ですね

昆布または昆布だしの大量摂取で健康障害あり

 一方、我が国の報告では、主に昆布だし汁からのヨウ素28 mg/日の約1年間の摂取事例133)、昆布チップ1袋を約1か月食べ続けた事例134)など、明らかに特殊な昆布摂取が行われた場合に、甲状腺機能低下や甲状腺腫が認められている

日本人の一般集団で3mg/日(=3000ug/日)と推奨量の数十倍を摂取しているとのことです

それで一応問題になっていないことから、3000ug/日を成人の耐用上限量としております

甲状腺の機能が低下すると、無気力や疲労感、記憶力低下など様々な不調に悩まされるので、程々にしておきたいところ

 

昆布だしは和食好きな人なら常用していると思うので要注意ポイントですねー

本レポートでは一週間辺り20mg(乾燥昆布10g、昆布だし400cc程度)に抑えることが薦められています

セレン(重要度★)

セレンは、セレノシステイン残基を有するたんぱく質(セレノプロテイン)として生理機能を発現し、抗酸化システムや甲状腺ホルモン代謝において重要である

こちらもホルモンに関わる栄養素です

完全静脈栄養中などに限りなくセレン不足になると死亡することもあるとか

日本人で欠乏することは少ない

推奨量は成人男性で30ug/日、女性で25ug/日です

が、後述するように日本人で欠乏することはあまりなさそうです

セレンサプリメントには過剰摂取のリスクあり

セレン含有量の高い食品は魚介類であり、植物性食品と畜産物のセレン含有量は、それぞれ土壌と飼料中のセレン含有量に依存して変動する163)。日本人は魚介類の摂取が多く、かつセレン含量の高い北米産の小麦と家畜飼料に由来する小麦製品や畜肉類を消費しているため、成人のセレンの摂取量は平均で約100 μg/日に達すると推定されている163)。セレンの場合、我が国の通常の食生活において過剰摂取が生じる可能性は低いが、サプリメントの不適切な利用に伴って過剰摂取の生じる可能性がある。

(中略)慢性セレン中毒で最も高頻度の症状は、毛髪と爪の脆弱化・脱落である147,164)。その他の症状には、胃腸障害、皮疹、呼気にんにく臭、神経系異常がある147,165─167)

魚介類、肉類、穀類に含まれるとなると通常の食生活では不足することはなさそうで、むしろ過剰摂取が心配されています

耐用上限量は成人男性で450ug/日、成人女性で350ug/日です

日本人の平均的な摂取量からすると過剰摂取自体は心配ないですが、サプリメントで補う必要は感じませんね

定量的情報が不十分であるため、生活習慣病の発症予防のための目標量(上限値)の設定はできないが、サプリメントを摂取してセレン摂取量を意図的に高めることは、糖尿病発症リスクを高める可能性があるので控えるべきである

本レポートでも、サプリメントの使用に関しては明確に控えることすすめています

クロム(重要度★)

クロモデュリンは、インスリンによって活性化されるインスリン受容体のチロシンキナーゼ活性を維持して、インスリン作用を増強する185,186)。したがって、クロムは必須栄養素であると考えられる。一方、実験動物に低クロム飼料を投与しても糖代謝異常は全く観察できず、ヒトの糖代謝改善に必要なクロムの量も食事からの摂取量を大きく上回る。これらのことから、3価クロムによる糖代謝の改善は薬理作用に過ぎず、クロムを必須の栄養素とする根拠はないとする説が最近、有力である187,188)

クロムはインスリン作用に必要であると考えられてきたが、必須でない可能性にも触れられています

食品からの摂取については疑問があるとされています

もしかすると近々見直されるかもしれませんね

クロムの含有量はデータによって乖離が大きく分析できない

献立のクロム濃度を実測した国内外の報告に基づくと、日本人を含む成人のクロム摂取量は20〜80 μg/日の範囲だと推定できる188)。一方、日本食品標準成分表2010194)を利用して日本人の献立からのクロム摂取量を算出すると、約10 μg/日という値が得られ195)、化学分析による摂取量推定値との間に大きな乖離が認められる。

(中略)このように、日本人のクロム摂取量に関しては、献立の化学分析による実測からの推定値と、食品成分表を用いた算出値との間に大きな乖離が認められ、正確な数値を推定することは難しい

実際の食事を分析した結果と、化学分析とのクロム濃度が噛み合っておらず、正確な数値が出せないとのこと

一応、目安量10ug/日が設定されていますが、明確な根拠はありません

海藻類に多く含まれはしますが、仮に80ug/日を達成しようとするとかなり厳しい(青のり200gに相当)

サプリで補う理由もないが、オススメもされていない

クロムの場合、通常の食品において過剰摂取が生じることは考えられないが、3価クロムを用いたサプリメントの不適切な使用が過剰摂取を招く可能性がある

(中略)クロム投与者における血清クロム濃度の変動の理由は不明であるが、1,000 μg/日の3価クロム摂取が健康障害を起こす可能性は否定できない

そもそも補う必要があるかも微妙ですが、サプリメントについてもオススメはされておりません

モリブデン(重要度★)

先天的にモリブデン補欠因子、又は亜硫酸オキシダーゼを欠損すると、亜硫酸の蓄積により脳の萎縮と機能障害、痙攣、水晶体異常などが生じ、多くは新生児期に死に至る206)。

文章だけを見るとやや怖いですが、モリブデン欠乏自体はほぼ事例がありません(完全静脈栄養で18ヶ月継続とか)

モリブデンの欠乏事例はほとんどなく、リスク低い

22 μg/日のモリブデン摂取を102 日間継続した4人のアメリカ人男性において、モリブデン出納は平衡状態が維持され、かつモリブデン欠乏の症状は全く観察されていない208,211)。この22μg/日に、汗、皮膚などからの損失量を他のミネラルのデータから3 μg/日と推測し、これを加えた25 μg/日を推定平均必要量の参照値とした。

成人男性の推奨量は30ug/日、女性で25ug/日と設定されています

しかし、モリブデン欠乏事例が殆どないので根拠としては弱そうです

さらに後述するように日本人で不足する心配は無さそうです

通常の食生活で推奨量の10倍近い摂取量である

モリブデンは穀類や豆類に多く含まれることから、穀物や豆類の摂取が多い日本人のモリブデン摂取量は欧米人よりも多く、平均的には225 μg/日217)、大豆製品を豊富に含有する献立の場合は容易に300 μg/日を超えると報告されている210)。

恐らく推奨量の数倍は平均的に摂取しているものと思われます

厳格な菜食主義者だとさらに倍程度になるそうですが、健康障害は認められていません

それを根拠に500ug~600ug/日を上限量としていますが、こちらもやや根拠は弱めです

通常の我が国の食生活であれば、推奨量の10 倍近いモリブデン摂取量になる。したがって、事実上、献立の作成においてモリブデンの摂取に留意する必要はない。

ここまで”考えなくていい”と明記されている栄養も珍しい

まとめ

微量ミネラルに関しては、不足よりも過剰摂取の心配の方が多い感じですね

食生活はもとより、サプリメントで補う必要性は全体的に感じないところ

昆布を食べすぎないように注意する、という程度でしょうか

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