食事摂取基準(2020年版)で脂質と正しく付き合おう

健康について学ぶ厚生労働省から学ぶ栄養

世の中の怪しげな情報に惑わされないために大事なのは、まずオフィシャルな情報に当たることです

ということで、厚生労働省の栄養摂取基準である「日本人の食事摂取基準(2020年版)」を読み解いています

今回は脂質についてです

 

↓総論はこちら

食事摂取基準(2020年版)でダマサれない栄養知識を身につける
栄養周りの情報はとにかく玉石混交で、商品マーケティングのために発信されていることも珍しくありません。必要以上に不安をあおられないようにするために、まずは厚生労働省の栄養摂取基準で基本を学びましょう!
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脂質の役割はエネルギーだけじゃない

 脂質は、細胞膜の主要な構成成分であり、エネルギー産生の主要な基質である。脂質は、脂溶性ビタミン(A、D、E、K)やカロテノイドの吸収を助ける。脂肪酸は、炭水化物あるいはたんぱく質よりも、1 g 当たり2倍以上のエネルギー価を持つことから、ヒトはエネルギー蓄積物質として優先的に脂質を蓄積すると考えられる。コレステロールは、細胞膜の構成成分である。肝臓において胆汁酸に変換される。また、性ホルモン、副腎皮質ホルモンなどのステロイドホルモン、ビタミンD の前駆体となる1)。 n─6系脂肪酸とn─3系脂肪酸は、体内で合成できず、欠乏すると皮膚炎などが発症する。したがって、必須脂肪酸である。

脂質は1gあたり9kcalを持つ比較的高エネルギーな栄養素です(タンパク質や糖質は4kcal/g)

同じ量を食べたとしても脂質の場合はカロリーが倍以上あるので、カロリーオーバーの原因になりやすいです

ただし、脂質はエネルギー以外の側面も多くあるので極端に制限するのは注意が必要です

 

上記の文章だけを見ても脂質が果たす役割は多くあります

  • 脂溶性ビタミンの吸収を助ける
  • 細胞膜の材料になる(つまり人間の体の基本的な要素の一つ)
  • 消化吸収に関わる
  • 各種ホルモンの材料になる
  • 皮膚炎が生じる

 

特に人間の体は微妙に調整されたバランスの上で成り立っており、その要素の一つがホルモンです

ホルモンが果たす役割自体は分かっていないことも多いので、

極端に制限した場合にどのような不調が生じるかは未知な領域かと思います

オメガ3脂肪酸、オメガ6脂肪酸の不足をケアするのが基本

脂質全体には、必須栄養素としての働きはない。その一方で、エネルギー供給源として重要な役割を担っている。また、脂質の一部を構成する脂肪酸のうち、多価不飽和脂肪酸(n─6系脂肪酸及びn─3系脂肪酸)は後述するように必須栄養素である。さらに、脂質の一部を構成する脂肪酸のうち、飽和脂肪酸は、後述するように、生活習慣病に深く関連することが知られている栄養素である。

正直なところ脂質種類ってたくさんありすぎて覚えられないんですよね

その点図にしてくれているのはありがたい

 

”脂質自体はただのエネルギーであり必須栄養素ではない”と言い切っています

しかしその一方で、脂質の中のいち分類である、n-3系脂肪酸とn-6系脂肪酸は必須栄養素であると言っています

極端に言えば、n-3系脂肪酸とn-6系脂肪酸だけあればいいということです。(何事もバランスですよ)

脂質の一日の目標量はおおよそ0.75~1.0g/kg

厚生労働省の基準では脂質量を総カロリーの20~30%と定められています

これは一日の総カロリーが2000kcalだとすると、およそ45~65gで、体重1キロ当たり0.75~1.0g程度です

(ざっくり計算です)

 

ただしこの範囲に脂質の摂取量を抑えるのはちょっとむずかしいです

なぜなら、大抵の肉類にはタンパク質と同量程度の脂質が含まれることも多く、加えて調理時に油を使用するためです

脂質を抑えながらタンパク質を摂るための代表的なアプローチは以下です

  • 油を使わない調理をする
  • 油が少ないタンパク源(鳥胸肉や魚介類など)を使用する
  • プロテインを使用する

 

バラ肉のような脂質が多い部位だとタンパク質より断然脂質が多いのでご注意ください

n-3系脂肪酸(オメガ3)、n-6系脂肪酸(オメガ6)は不足に注意

脂質自体は必須ではないですが、そのうちのn-3系脂肪酸、n-6系脂肪酸は必須栄養素です

脂質自体は控え気味でも問題ないでしょうが、この2つはしっかりと摂取しておく必要があります

上記の脂質20~30%基準も、脂質全体における平均的な必須脂肪酸の摂取比率から算出しています

 

すなわち、20~30%の脂質を摂っていたとしても、必須脂肪酸は不足する可能性があります

n-3系脂肪酸(オメガ3)はやや注意

α-リノレン酸、EPA・DPA、DHAとも言われ、ナッツや青魚に多く含まれます

含まれる食品に偏りがあるので、やや意識して摂取したほうが良いと思われます

不足すると皮膚炎になると明記されておりますので、肌荒れが気になる方は意識すると良さそうです

 

くるみ30g、青魚50gもあれば一日の目安量に至るのでそれほどハードルは高くないですが、

一人暮らしだと魚は遠のきがちです

週に2,3回は魚を食べるようにしたほうがよさそうですね

しかしながら、n─3系脂肪酸の必要量を算定するために有用な研究は十分には存在しない。その一方で、日常生活を自由に営んでいる健康な日本人にはn─3系脂肪酸の欠乏が原因と考えられる症状の報告はない。そこで、現在の日本人のn─3系脂肪酸摂取量の中央値を用いて目安量を算定した。

とはいえn-3系脂肪酸の摂取量や欠乏症に関しては強い根拠はないようです。難しい…

n-6系脂肪酸(オメガ6)はあまり不足を気にしなくてもよさそう

リノール酸、γ-リノレン酸、アラキドン酸とも言われ、コーン油やごま油、大豆などに含まれます

一般的な調理油にも含まれるので、n-3系脂肪酸に比べると不足することは少なそうです

植物油20g(大さじ1.5強)や、魚の缶詰100g程度で一日の目安量を摂ることができます

n─6系脂肪酸の必要量を算定するために有用な研究は存在しない。したがって、推定平均必要量を算定することができない。その一方で、日常生活を自由に営んでいる健康な日本人にはn─6系脂肪酸の欠乏が原因と考えられる皮膚炎等の報告はない。そこで、現在の日本人のn─6系脂肪酸摂取量の中央値を用いて目安量を算定した。

n-6系脂肪酸についてもあまり強い根拠がないようです

飽和脂肪酸は良くも悪くもない

4─3─1─1 生活習慣病との関連
成人においては、飽和脂肪酸摂取量と血中(血清又は血漿)総コレステロール濃度との間に正の関連が観察されることはKeys の式8)及びHegsted の式9)として古くから知られており、27 の介入試験をまとめたメタ・アナリシス10)でも、さらに、研究数を増やした別のメタ・アナリシス11)でもほぼ同様の結果が得られている。(中略)

ところが、飽和脂肪酸摂取量と総死亡率、循環器疾患死亡率、冠動脈疾患死亡率、冠動脈疾患発症率、脳梗塞発症率、2型糖尿病発症率との関連をコホート研究で検討した結果を統合したメタ・アナリシスでは、いずれも有意な関連は認められなかったと報告されている(中略)

飽和脂肪酸を多価不飽和脂肪酸に置き換えた場合、心筋梗塞発症率(死亡を含む)の有意な減少が観察されて
いる。一方で、メタ・アナリシスによると、日本人は、他の国民と異なり、飽和脂肪酸の摂取量と脳出血及び脳梗塞の発症(又は死亡)率との間には負の関連が観察されている17)。しかし、この関連が飽和脂肪酸の直接作用によるものか、他の栄の栄養素等摂取量を介するものかについては更なる研究を要すると考えられる。

ここはかなり難しいところ

飽和脂肪酸は肉や卵、乳製品にも含まれるので、悪者だとすると結構面倒なことになります

(卵は1日1個まで説や、バターが健康に悪い説はの根拠の一つ)

 

私なりに要約すると、

飽和脂肪酸を食べるとコレステロール値が上昇する傾向があるが、生活習慣病への関連は確認できない。

という感じに収まりました

 

今のところは飽和脂肪酸そのものを危険視する必要は無さそうです。良くも悪くもない。

(摂りすぎてカロリーオーバーして肥満になったらもちろんダメ)

個人的には普通にバターを使っています

一価不飽和脂肪酸は飽和脂肪酸よりはマシかも…?

一価不飽和脂肪酸摂取量と総死亡率、循環器疾患死亡率、脳卒中死亡率、心筋梗塞死亡率の関連を検討したコホート研究の結果をまとめたメタ・アナリシスでは、どの指標でも有意な関連を観察していない47)。また、同様の検討を心筋梗塞に限って行ったメタ・アナリシスでも、有意な関連を見いだしていない48)。しかし、一つ目のメタ・アナリシスでは、「一価不飽和脂肪酸摂取量/飽和脂肪酸」の比が総死亡率や循環器疾患死亡率と有意な負の関連を示した47)。このことは、飽和脂肪酸に比べれば相対的に一価不飽和脂肪酸が循環器疾患の予防に寄与し得る可能性を示唆しているものと考えられる

”一価不飽和脂肪酸は、飽和脂肪酸よりマシかもだけど明確な根拠がない”というところです

オリーブオイルが一価不飽和脂肪酸をよく含みますが、オリーブオイルが体にいいとされる理由は他にありそうですね

(オメガ6よりも酸化しにくいことに加え、ポリフェノールが多いとか)

トランス脂肪酸はやっぱり避けるべき

  トランス脂肪酸は、飽和脂肪酸よりもLDL コレステロール/HDL コレステロール比を大きく上昇させることが、介入試験をまとめたメタ・アナリシスで示されている50)。コホート研究をまとめたメタ・アナリシスでは、工業由来トランス脂肪酸の最大摂取群は最小摂取群に比較して冠動脈疾患発症の相対危険が1.3 倍であったと報告されている51)。(中略) 世界保健機関(WHO)を始め、アメリカなど幾つかの国では、トランス脂肪酸の摂取量を総エネルギー摂取量の1% 未満に留めることを推奨している57,58)。したがって、あくまでも参考値ではあるものの、日本人においてもトランス脂肪酸の摂取量は1% エネルギー未満に留めることが望ましく、1% エネルギー未満でもできるだけ低く留めることが望ましいと考えられる。

一方で面白いのがトランス脂肪酸です

大抵の栄養素はバランスが大事ですが、トランス脂肪酸だけは”可能な限り避けること”としています(WHOですらも)

トランス脂肪酸自体は自然な食品にも含まれますが、特に工業由来のもので悪い相関が出ています

 

トランス脂肪酸を摂るほど記憶力が下がるという話もあります

日本人平均としては欧米人よりトランス脂肪酸摂取量は少ないとのことですが、安心するなとも書いてありますねー

マーガリンやショートニング、水素添加脂肪酸等の名前でパンやケーキ、スナック菓子に含まれております

卵とコレステロールの関係は微妙なところ

コレステロールは、ステロイド骨格と炭化水素側鎖を持つ両親媒性の分子である。体内で合成でき、経口摂取されるコレステロール(食事性コレステロール)は体内で作られるコレステロールのおよそ1/3〜1/7 である59)

(中略) 個人や集団ごとに異なるものの、コレステロール摂取源の主なものは卵であり、そのために、疫学研究ではコレステロール摂取量の代わりに卵摂取量や卵摂取頻度を用いた研究も多い。このような方法を用いたコホート研究の結果をまとめたメタ・アナリシスは、卵摂取源と心筋梗塞発症率との間に有意な関連は認められなかったと報告している62)。我が国で行われたコホート研究でも、ほぼ同様に、虚血性心疾患や脳卒中死亡率、心筋梗塞発症率との間に有意な関連は認められていない63,64

(中略)最近に発表された個々の研究を概観すると、アメリカで行われた六つのコホート研究のデータをプールして解析した研究では、コレステロール摂取量及び卵摂取量と、循環器疾患発症率及び総死亡率の間に、いずれも有意でほぼ直線的な正の関連が観察されている65)

(中略)少なくとも循環器疾患予防(発症予防)の観点からは目標量(上限)を設けるのは難しいと考え、設定しないこととした。しかしながら、これは許容されるコレステロール摂取量に上限が存在しないことを保証するものではないことに強く注意すべきである。

こちらもかなり微妙なので私なりに要約すると、

”主要なコレステロール源は卵であるが、食事でとったコレステロールが反映される割合は少ない。そしてそのコレステロール値が生活習慣病へ影響するかは結論が出ていない

というところ。微妙ですね

 

血液検査でコレステロール値に異常が無ければ気にせずどうそ、という程度でしょうか

まとめ

個人的には下記を実践しています

  • 加工食品(工業由来のトランス脂肪酸)を可能な限り避ける
  • 青魚を週に2,3回は食べる

 

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