栄養についての情報は、読む人の体に直接関わります
栄養士でもない素人のブログですが、間違った(偏った)情報を発信してしまっていないかは気をつけておきたいところ
そこで読んだのが”データ栄養学のすすめ”です
2つの危惧
(中略)一つは、「食と健康の情報」を作り提供する側も、それを受け取り活用する側も、その扱い方や使い方についてほとんど学んでいないことです。(中略)もう一つは、「食事と栄養の乖離」です。(中略)食事の役割はおいしさや楽しさと言った快楽(または文化や芸術)の追求が中心になり、体が必要とする栄養は食事と呼ぶべきもの以外から取ろうとする流れです。 ※”はじめに”から抜粋
- メリットだけをやたらと強調した健康食品(または食事法)に振り回されている
- ジャンクフードを食べながらサプリメントで栄養補給をしようとする
私もこれまでサプリメントや食事法を色々試してきた身ですので、ドキッとしますね
著者は厚生労働省の食事摂取基準にも関わっておられる佐々木 敏氏です
豚肉にはビタミンB1が豊富であり、夏バテや疲労回復、肥満に効く!は本当か?
豚肉でスタミナをつけよう!というのはレストランやスーパーでごく普通に見かける表現です
「ビタミンB1不足で太る説」は、代謝経路の一部だけを取り出し、そこから想像される結果を強調したようなもののようです。前項でも紹介したように、ビタミンB1が足りなくなると、太るのではなく、その前に脚気の症状が出ます。また、昔、脚気を患った人が太っていたという記録も見つかりません。なんでも「太る」に結びつけたい現代人の健康志向が生み出した作り話と見ました。
特にビタミンB1の場合、推奨量とは「尿中から排出されるビタミンB1の量が有意に増える摂取量(=これ以上とっても意味が無いよ)」であり、脚気の危険ラインでも無ければ慢性疲労ラインでもありません
また、健康的な日本人において、脚気の危険ライン近くにいるのは0.3%とかなり少ないとも言われております
豚肉にビタミンB1が豊富に含まれていることは事実で、ビタミンB1がエネルギー代謝に関わっていることも事実だが、(健康な人が)ビタミンB1を摂取すれば疲労が回復したり痩せたりするわけではない、ということでしょうか
当たり前のように信じてたことも、データを見るとそれほど信頼性が無いんですね…
カルシウムを摂取すると骨が強くなる!は本当か?
カルシウム消費量が多い国のほうが骨折する人が多い傾向にある。(中略)カルシウム消費量が多い国ほど、カルシウム以外に、多い(または少ない)何かがあり、それがカルシウムよりも骨折に強く影響しているから。(中略)日本人女性のカルシウム摂取量の少なさがよくわかります。もう一つ、注目すべき結果は、カルシウム摂取量が少ない群ほど腰椎骨折の発症率が高かったことです。
前者は欧米諸国の実験で、日本よりある程度カルシウム摂取量が多い群を対象にしています
その場合、カルシウムの摂取量より、カルシウムの摂取量が多い国ほど日に当たる時間が少ないこと(ビタミンD不足)や、運動不足、喫煙率の高さが影響していることに触れられています
その一方で、後者の場合、日本人は欧米よりカルシウム摂取量がかなり少ない(スウェーデンの1/6)ため、カルシウムを摂れば骨折する可能性を下げられるかもしれない、ということです
個人的に感じたのは、
栄養に関する調査結果は、対象としているグループや前提によって180°変わってしまう可能性がある、ということ
流行りのダイエット法や食事法が紹介されるときにはもっともらしい調査結果がついていることもあります
ただそれが日本人にも当てはまるかは慎重に判断する必要がありそうですね
コレステロール値が高い人は、何もしなくても翌年下がる?
1年目の値が高かった群の平均値は翌年に下がり、1年目の平均値が低かった群の平均値は翌年に上がっています。(中略)この変化の原因を細かく分析した結果、その大部分は「平均への回帰」で説明できるようです。
人間の体調にはバラツキが存在します
なのでコレステロール値が高かった人だけを抜き出すと、その中には”今年たまたま高かった”だけの人もそれなりに含まれるということです
このバラツキを除くためには、十分な被験者と、十分な期間や測定回数を揃える必要があります
まじめな医師や栄養士は平均への回帰のことをよく知っていて、治療や生活改善の効果を控えめに解釈し、慎重に説明します。
はやりのダイエット法や健康食品のCMとは全く逆ですね
まとめ
本書は特定の食材やビタミンの良し悪しを言うものではなく、データの取り扱い方を教えてくれる本です
その他、
- 野菜「一日に350g」の根拠はどこにあるのか?
- 卵 血中コレステロールにとっては要注意食品か?
- 低糖質ダイエット 糖尿病の予防と管理に有効か?
など面白い切り口が満載でございます
栄養に関して興味がある人は、最初に読んでおくとキャッチーな情報に振り回されずに済みそうですね
最後に響いたところを抜粋します
今の私達に不足しているビタミンがあるとすれば(比喩的に言えば)、それは科学的な「理解力」や、総合的で客観的な「判断力」ではないでしょうか。なぜならば、(中略)私達の健康はとても複雑で微妙なバランスの上に成り立っているからです。
耳が痛い…